「ready made」への思い

 

5〜6年前だったかお馴染みのお客様から「n@tsukoさんはオリジナル・ブランドの販売はなさらないのですか?」と尋ねられたことがあった。
私は「まったく考えていないのですよ」とお答えした。
オーダーメイド、いわゆるオンリー・ワンのデザインが私の目指すところであったし、ご依頼主とゼロから一緒に作り上げていくことこそが醍醐味だと感じてたので、出来合いのものを売るという発想はまったく持っていなかった。

その私が、この度「ready made」をデビューさせることになった。
きっかけは、私が着けていたペンダントとピンキーリングに、同じものが欲しいという声が寄せられたことだ。
自分のためだけにデザインしたジュエリーに全幅の共感を得られることはこんなにも嬉しいものなのか・・・と、不思議な感動があり、既製品の開発を手掛けてみようかと思い立ったのだった。

具体的にアイデアを練り始めたのは、昨年の夏からだ。
企業から届く企画書には、「ターゲットは30代の違いのわかるキャリア・ウーマン」や「トータル○○ctのダイアを使った、やわらかさと冷たさが共存したようなデザイン」のように意味不明なコンセプトが掲げられているのが常で、これこそが既製ジュエリーに嫌悪感を持つようになった原因のひとつで、依頼を受ける度にうんざりさせられたものだ。
とはいえ、やみくもに作ればよいというものでは決してなく、 揺るぎないテーマとジュエリー自らが放つ説得力あるフォルムが必要だ。
そこで、ターゲットを「自分自身」、私が愛おしいと思い、なおかつ私が身に着けたいと思うジュエリーを作ろうと決めたのである。

一番に浮かんだのが、今回第一段になった「キャラメル」。
それ自体が大好物であるのはもちろんだが、あのキャラメル包みのフォルムが、最高にかわいい。
実際のいろいろなキャラメルを見ながら、無造作に折られた包み紙の重なり具合や大きさを何度も検討した。
「三日月」は、遥か昔から作りたいと思っていたもので、アニメチックでなはい本当の三日月の形をペンダントにしたかった。
本体以上にこだわったは、チェーンを通すバチカンだった。
市販されているペンダントトップは、(トップに大きさに応じてではあるが)どのようなチェーンでも通せるよう大きめのバチカンが使われる。
縦長の楕円だったり、二等辺三角形だったり。
私はそれらが嫌いで、オーダーメイドにおいては最小サイズのバチカンを推奨していたのだが、「ready made」では内径3mmの丸カンを付けることにした。
もっと大きな丸カンもあるし、大きな方がお手持ちのチェーンをすぐに通せるというメリットもあるのだが、あえて私は3mmにして、ペンダント本体のフォルムへの影響を押さえることにした。
ラウンドという形状も本体との相性がよいと思っている。
お手持ちのネックレスの金具を確認していただき、場合によっては交換・・・とは、製品販売においては不親切なのかもしれないが、このこだわりをご理解いただければ幸いに思う。

まだ2アイテム、サイズ違いを入れても3種類と、デビューというにはあまりにもお粗末なラインナップだが、サイトオープン10年目に当たる本年にスタートさせることができて、最高に幸せな気分を味わっている。
まろやかなキャラメル、細さが自慢の三日月に続き、今風にいう「オトナ可愛い」ジュエリーを、楽しく増やしていきたいと思っている。
こんな身勝手な「ready made」ですが、どうぞよろしくお願い致します。

 

n@tsuko

2008.2.27