「ピアスの話」

 

ファーストピアスとして選ばれる方も多い、スタッドタイプのピアス。
耳たぶにピタッとつくもので、あらゆる種類の石が用いられるが、このタイプにはなんといってもダイアモンドがいい。
大粒になると、輝きの迫力が増す分、購入にも多大な勇気がいるが、「いつかは・・・」とあこがれる女性も多いはずである。

数年前の私も例外ではなく、それは清水の舞台からダイブするほどの思いであったが、とうとう購入に至ることが出来たのだ。
ペアシェープともティアドロップとも呼ばれる、雫形のダイアを2石。
さっそく、その「スタッドタイプ」とやらを作ることにした。

3つの小さな爪で留められ、石座もとても繊細につくられたピアスが出来上がってきたのも、つかの間・・・。
大きな落胆とともに、ピアスは耳たぶからはずされ、職人に送り返されるはめとなった。
やっぱり似合わない・・・。
実のところ、それは数年前からわかっていたことで、幾度となく作っては分解をくり返し、それでもスタッドへの思いは冷めることなく、石を大きくすれば・・・と期待もあってのダイブだったのだ。

着ける側を選ばないとされる、もっともノーマルなデザインであるはずなのに、なぜなのか。
それは、似合わないのではなく、好きではなかったということだ。
耳たぶの下でゆらゆら揺れる、動きがあるデザインを私は好むのだということに、今さらながら気付かされた次第だったのである。
簡単な答えのようだけれど、宝石は高価さ・美しさゆえに、それをどう着けるかを、困惑させることが多々ある。
着けていることを楽しめるかどうか、心地よく思えるデザインであるかを見つめることは、とても大切なことで、言い換えれば、安価な材料であっても、自分の嗜好さえ間違えなければ、充分に楽しめるものになる。

 

こうして完成したのが「my style 〜 page.3 〜」のピアス。
揺れるたびに頬にふれる感触と、髪の隙間から覗く輝きが、大いに気に入っている。
友人でもある職人は呆れていた。
細部も含めて、ゆうに4回ものリメイクをさせたのだから・・・。